症状と考えられる病気

新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の説明

2019年末中国の武漢より原因不明の肺炎、呼吸不全をきたす症例が報告され、原因がこれまで重篤な肺炎を起こしていたSARS(重症急性呼吸不全症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の原因となったウイルスと同種の新しいコロナウイルスの感染であることが判明いたしました*1。その後日本も含め世界に伝播、流行となっております。2021年8月現在、ワクチン接種が進んでいるにもかかわらず変異を起こしたウイルス(デルタ株)の感染が国内外で広がっております。
感染に関しては、飛沫感染・接触感染が主体と考えられておりますが、ウイルスの特徴からか人と密に接する場面での感染が問題となっております。

発熱や咳嗽が続き、倦怠感が強いことなどが言われておりますが、COVID-19に特徴的な所見として、嗅覚・味覚障害が比較的早期から出現すること*2、症状がはっきりしないまま肺炎が進行することなどが報告されております。 50歳代以上の高齢者は年齢と共に重症化の割合が高くなること、また高血圧や糖尿病、慢性呼吸器疾患を合併している方は危険因子として報告があります*3が、感染者の8割は症状がないか軽症であるとの報告もあります。

その感染性、や特効薬がない現時点では(ワクチン接種は2021年8月現在国内での接種は高齢者を中心に進んでおりますが)、まずは感染しないことが重要となります。感染が判明した場合は、症状に応じた治療と並行して他人に対する感染防止策も重要となります。
治療薬としては軽症に関しては特別な医療を必要とせず自然に軽快することが多いとされておりますが、発症後2週目までに急速に病状が進行するケースがあり要注意です。重症化リスク因子のある患者さんですが、カリシビマブ、/イムデビマブの点滴投与が入院下で行われます。中等症以上の場合はレムデシビル、呼吸不全がみられる場合はそれに加えて酸素投与、ステロイドやバリシチニブなどの投与が行われます。これらにて呼吸状態が維持できない場合は、人工呼吸や膜型人工肺(ECMO)が行われます。また血栓症による悪化予防に抗凝固薬(ヘパリン)が使用されます。
ワクチンに関しては、現在日本で摂取が進んでいるファイザー/ビオンテック社およびモデルナ社のワクチンには9割の発症予防効果や重症化予防の効果が報告されております*4,5。開発から時間がたっていないため長期的な副作用に関しては結論が出ておりませんが、12歳以上に関しては接種が推奨されており、また妊娠中の方にも推奨されております。

1.Zhu, N. et al. A novel coronavirus from patients with pneumonia in China, 2019. New England Journal of Medicine 382, (2020).
2.Giacomelli, A. et al. Self-reported olfactory and taste disorders in SARS-CoV-2 patients: a cross-sectional study. Clinical Infectious Diseases 1–2 (2020) doi:10.1093/cid/ciaa330.
3.Guan, W. J. et al. Comorbidity and its impact on 1,590 patients with Covid-19 in China: A nationwide analysis. European Respiratory Journal 55, (2020).
4.Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med 2020;383(27):2603–15.
5.Shimabukuro TT, Cole M, Su JR. Reports of Anaphylaxis After Receipt of mRNA COVID-19 Vaccines in the US — December 14 , 2020-January 18 , 2021. 2021;2020–1.